私のバックグラウンドが、IT業界の営業が長いこともありコンサルティングを提供しているクライアント様の9割はIT商材を扱う企業です。こうした企業の経営者のほとんどは、営業マンの営業力をなんとか強化したいという共通したお悩みをお持ちです。こうしたお悩みを紐解いていくと営業マンの個の力に期待をし過ぎているということがわかります。

求められる理想像とのギャップ

以下に過去にお聞きした営業マンに求める要件をいくつかあげてみましょう。

  • 中途採用した異業種出身の営業マンに製品のデモから要件のヒアリングまでをこなせるようにさせたいが、どうしたらよいか。
  • SE出身の営業マンに、お客様となんでも話せるような人間関係を構築し注文を貰ってもらうようなコミュニケーション術を身に着けさせたいがどうしたらよいか。
  • 新入社員や管理部門出身の営業マンをとにかく早く一人前の営業マンにしたい。

技術に詳しく、しかも営業もできるというすごい営業マンを求めていることがわかります。私自身も長くIT業界にいましたが、技術も営業もできる両刀使いの優秀な営業マンには、お会いしたことがありません。

優秀な営業マンはどこにいる

私のいた外資系のソフトウェアベンダの場合は、高い報酬で優秀な営業マンを集め彼らの個々の力によって全体の売上を支え、成果が出ないものは去っていくということで売上を維持することをしていました。

しかし、多くのIT企業はこうした方法で営業力を強化していくことは不可能ですし、おすすめできません。第一にお客様との営業担当社が頻繁に替わっていては、信頼関係が構築しにくいこと、第二にIT商材を営業するには、幅広い知識が必要で簡単に適任者を採用することができないからです。仮に見つけられたとしても、高額な報酬を要求されるでしょう。

私は、受託開発やクラウドサービスのようにお客様のニーズを汲み取って商品やサービスを販売する場合、技術を売るための仕組みを作ることをオススメしています。本コラムでは、この仕組みづくりを「技術を売る技術」としてご説明していきます。

「技術を売る技術」が必要な理由

それは、IT業界の営業部門はエンジニアと異なり様々なバックグラウンドを持っているからです。前述した通りIT業界の営業マンの経歴には、エンジニアを数年経験してから営業に転向した人、IT業界の営業があり中途採用された人、異業種での営業経験はあるが、IT業界は未経験の人、新卒や管理部門などからきた技術も営業未経験な人と様々です。

こうした営業メンバーに一様にデモから要件のヒアリングまでをさせたり、コミュニケーションのテクニックを学ばせたりしても、効果が出る以前に営業効率が悪くなってしまうでしょう。むしろ現状の営業のリソースを分析し、営業マンの個性を最大化するような営業の組織を作っていったほうが効率的です。

エンジニアの参加は不可欠

「技術を売る技術」では、まず自社の営業という仕事を分解する必要があります。往々にして営業にやらせている仕事の中には、営業がやらなくても良い仕事が含まれています。

とある会社では、営業マンが請求書を作成するために月末の一週間は顧客訪問が出来ないと現場の担当者から相談があったことがありました。話を聞いてみると経理部門の部長が社長の愛人で意見が出来ないといった笑えない理由で営業に業務の負担が増えていました。

こうした話は例外だとしても、営業の業務を分解してみることでリソースの最適化が出来ます。

このときにメンバーにエンジニアの経験がある人がいればベストです。エンジニアの経験を活かしてお客様から要件を細かくヒアリングしてもらいニーズを満足させる提案をすることができるからです。もし、営業メンバーにエンジニアがいない場合は、社内で営業同行できるエンジニアをアサインしてください。セールスエンジニア、技術営業というポジションになります。

「技術を売る技術」に大きな投資は不要

「マネー・ボール」という映画をご存知でしょうか。メジャーリーグの貧乏球団・オークランド・アスレチックスのビリー・ビーンGMが、セイバーメトリクスと呼ばれる独自の手法を用いて、プレーオフ常連の強豪チームを作り上げていく様子を描いた映画です。セイバーメトリクスとは、野球を統計学的手法で分析する方法です。

営業も確率論の仕事ですので、もっと受注確率を高めるにはどうするかを仕組みとして構築する必要があります。