営業コンサルタント物語(1)「小幡、営業やるってよ」

エンジニアとして充実した日々を過ごしていたら、ある日突然、上司から「営業をやってくれ」と言われる。IT業界では、よくある話だと思います。

それまで、開発に従事していた、技術サポートを提供していたといった技術職から、営業職への転向するという例は珍しくありません。

しかし、私の場合は、まったく違っていました。

当時の私は、大学時代に家電量販店で全国でもトップレベルの販売成績を出したこともあり、変に鼻っ柱の強いところがありました。転職の際にも経験もないのに営業をやりたいだけで、面接を繰り返していました。

メインフレームやオフコンのカスタマエンジニアから、それを販売する側に転向するのではなく、まったく違う業界の半導体設計のソフトウェアを販売する外資系企業の営業職に転職したのです。

エンジニアから営業になり、自社の商品やサービスをガンガン売って結果を残している人はたくさんいます。しかし、まったく違う分野の営業職に転職する人はけっして多くはないでしょう。

いきなり成果主義の外資系企業の営業門に配属され、経験なし、知識なし、人脈なし、英語もしゃべれず、売れなければリストラに一番近い営業マンになったのです。

私は、エンジニアから営業職に就いた「転向組」ではなく、「転職組」なのです。最初の数年は苦労の連続でした。

配属された部門は、イケイケの営業マンばかり。基本的に彼らは、会社にいないので、どうやって営業をやったらいいのか誰にも聞けない。会社に来て毎日製品カタログを読んでいると、ようやく先輩から「一緒にお客に行こう」と声がかかりるようになりました。

今思えば、こうしたOJTから始まったのが良かったのかもしれません。型通りの営業研修を経て営業の現場に出るのではなく、エンジニアとしての経験を経て第二新卒として営業として採用されたことで営業の行動ひとつひとつに「なぜこうするのか」という理由を考えながら行動ができたからです。

もうひとつ良かったのが、イケイケの営業マンが多かった職場だったこと。彼らは、当時の課長が他の会社から引き抜いてきた天才的な営業ばかりだったので、営業の現場で見て学ぶ事ができたのです。

よくいう言い方ですが、TTP(徹底的にパクる)を文字通り実行したのです。

天才的な営業マンから話術や営業テクニックを学ぶ一方で、「なぜこうするのか」を考えながら仮説検証していきました。天才的な営業マンの話術や方法の中には、その人だから出来る、同じ結果にならないこともありました。

こうした経験を通じて、どうやれば売れる営業になれるのかという、営業のテクニックがなんとなく身についてきたと思い始めました。

初年度は、上司の支援もあり売上予算100%を達成でき、営業への転職は順風満帆に思えたのです。

その矢先に会社が競合他社に買収されたのです。(続きます)